【第13話】 洞窟探索……② 犠牲ありきの言動、冷え切る酒場

アドセンス横長

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4 洞窟探索……②

洞窟探索を始めて数日が経ち、今日も暗い洞窟を進む。

事前に聞いてはいたけれど、洞窟探索は狩りと比べて全然お金にはならなかった。

◆生活費の格差と、狩りの全能感

洞窟探索は、お金にならないのもそうだけれど、どんよりとした空気が何よりも良くなかった。

こんなにどんよりしていたら、気持ちまで一緒にどんよりしてしまう。

「何か思ってたのと違うんだよなぁ……これなら狩りの方が良いんじゃねぇの?」

思っていても口に出さないのが普通なんだけど、ホセは出す。

……こいつは本当に空気が読めないな……『思ってたのと違う』んじゃなくて、事前に聞いていた事を忘れているだけだろ……まぁ、覚えていても、思ってたのと何か違うって、俺も思ってるけど……。

ただ、それを口に出すのは自分までホセみたいで嫌だった……。

生活にはお金が掛かる。

安定した生活は捨てられないから、洞窟探索だけじゃなくて、狩りに行く日もある。

前は怖かった狩りも、洞窟に行くようになってから、いつの間にか好きになっていた。

外の方が開放的でみんな生き生きしている。

その日は、生活費を稼ぐために狩りに行き、そこそこ満足出来る成果を手にしてキナーク砦に戻ってきた。

いつものように酒場に繰り出し、酒と飯に食らいつく。

「みんなが魔法を覚えてから、戦闘に関してはだいぶ安定してきたわね」

エマはそう言いながら美味しそうにお酒を喉に流し込んだ。喉の動きが少し色っぽく見えたミカドは、その姿に密かに釘付けになっていた。

今日は、特に議題という議題は無く、普通に食事を楽しみながらワイワイ雑談をする予定だった。

エマの言う通り、実際狩りは安定していると思うし、憂鬱な気分にはなるけれど、洞窟探索も問題らしい問題は無いように思えた。

……正直上手く行っているよな? ……オマールもエマも馴染んできたし……。

出会った当初こそエマの人柄は分からなかったが、今ではだいぶ理解できていると思う。

彼女は一歩引いた所から物事を見るのが性格的に好きなようだ。

状況を客観的に見て客観的に判断するタイプといえる。

「やっぱり魔法が使えると全然違うね。後ろから見てて凄っごい頼もしいもん」

お酒がいい感じに回っているのだろう。

いつも後方からの指示や回復を担当するリオニが、興奮気味にそう言った。

……こういう時は念のため、少し距離を置いた方がいいんだよな……。

リオニの様子を見て、ミカドはそっと端の方に避難した。

「ほんとそれだよなぁ! 特に身体強化の魔法はヤバいよな! レベッカなんてどっちがモンスターか、俺が本気で迷うレベルだぜ!?」

命知らずの勇者ホセが、無自覚にレベッカを煽っている。

「ああん!? お前を狩るぞ!?」

レベッカは魔法で身体強化を覚えてからというもの、とにかく絶好調だった。

気力もかなり充実しているようで、機嫌も良い。

その証拠に、ホセの失言が冗談で済んでいる……これはホセにとってかなりの幸運だろう。

ただ、洞窟に入ると途端にやる気が萎えるらしく、ただのポンコツになるから困ったものだ。

レベッカとじゃれているホセは、戦闘で意外なほど安定した動きを見せる……安定して平凡な動きを……。

カッコイイからと選んだ火魔法は予想通り焚き火や料理の時に大活躍している。

頼られて喜んでいるが、もちろんそれは本人のイメージしていたカッコイイ使い方ではない。

ホセにそういう間抜けさが無く、単に空気の読めない奴だったなら、流石に仲間から嫌われていたかもしれない。

「今度は間違えてホセの頭を潰すかもなぁ……? あっはははは」

「は……ははっ。悪い冗談……。冗談だよな? ……なあ??」

ホセは空気が読めないから冗談を冗談と分からない事が多いので、レベッカの冗談に顔が引き攣っている。

……まあ、冗談じゃないときがあるからな……。

「まあまあ。みんな本当に凄いと思うよ。俺達はこの中に加われてラッキーだったと本気で思ってるから。なあエマ、エマもそうだろ?」

「そうね。私も幸運だったと思ってるわ」

そういって笑うオマールとエマは、みんなが成長するにつれて、存在感がどんどん薄れている。

当の本人は、それが嬉しいように見える。

……元々、人を引っ張るのに向いた性格や力を持って無いからだろうな。

今のオマールもエマも、初めて会った頃に比べて肩の力が抜けて自然体に見えるのは、恐らく気のせいではないだろう。

◆犠牲ありきの言動、冷え切る酒場

「でも、実際ここまで安定する前に何人か脱落すると正直思ってた」

エマはサラッと本音を口にしたが、ミカドはエマもオマールも犠牲ありきの言動に見えていたので、驚きはなかった。

あまりにも明け透けな発言に、場の空気が少し冷えた。

「み、みんなが頑張ったのもそうだし。最初に2人から教われたのも良かったと思うなぁ」

エマの発言にすかさずフォローを入れたのはレオンだ。

仲間が纏まっていられるのは、やはりレオンによる縁の下の支えが大きいからだろう。

「明日は……洞窟の方……なのかな??」

エニアは少しオドオドした感じで誰に、と言う訳でもなく質問を投げ掛けた。

……エニアって、未だによく分からない不思議ちゃんなんだよな。

そんなエニアの問いかけに答えたのはアレックスだった。

「そうしようかと思ったけど、みんなはどう? 何かあれば聞かせてよ」

「俺は狩りの方がいいぞ!!」

「そう? 分かった、考えておこう、他のみんなはどう?」

ホセを適当にあしらい、アレックスは他に意見が無いか、仲間のみんなに意見を求める。

こういう仲間を蔑ろにしない発言を自然にできるのがアレックスらしい。

少し待ってみて、ホセ以外、特に反対意見も無かったので、明日は洞窟探索……という事に決まった。

予定が決まってから、仲間の飲み食いが加速するまで速かった。

キナーク砦に来た当初は、お金の心配をして満足に食べられなかったものだ……。

……俺は成長してんのかな? 

ミカドは避難した端の方で1人……そんな事を考えていた。

今いる酒場は、入った瞬間に濃い酒と料理の匂い、それに客の喧騒に圧倒されるような店だ。

他の客も、騒いで酔っ払っているので、時間が経つにつれてミカド達も全てが麻痺し、呑み込まれていく。

気が付けば、いつの間にか仲間も濃い空間に溶け込んでいて……。

みんな本当に楽しそうだった。

……俺もみんなと楽しみたいなぁ。

本音では一緒に楽しみたいと思っていても、これまで積み上げた印象やプライド、それから恥ずかしさなんかが邪魔をして、ミカドはみんなとはっちゃけて楽しむという行動ができない。

思春期に作り上げた自分というキャラクター設定に失敗しているのだ。

とはいえ、たとえ人間関係がリセットされたとしても、自分みたいな人間が仲間と楽しく騒いでいる姿は想像できない……。

……はぁ、嫌になるな……俺がアレックスみた……?

『バンッ!!』

「誰かっ!!」

違和感を覚えると同時に、大きな破裂音が弾け、ドアが勢い良く開かれた。

客が何事かと次々に入り口へと視線を向けた。

酒場に悲壮な剣幕が広がっていく。

これから良くないことが起きそうな予感に、ミカドは知らず脂汗を滲ませた……。

アドセンス横長

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