【第3話】 旅立ち……③

アドセンス横長

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1 旅立ち……ブログ用③

ようやく世界樹のてっぺん? らしき場所に着いたあと、今度は洞窟の移動が始まる。

上の世界の移動は基本的に大洞窟を利用する。

大洞窟から地上に出るのは簡単で、地上に通じるいくつも出入り口の穴が存在している。

だけど、地上は大型の魔物や魔獣の領域で、人が我が物顔で歩ける場所では無い。

かといって、洞窟も安全とは言えないのだが。

それでも、洞窟の中だとモンスターの数が地上より少なく、また、敵の現れる方向が絞られてリスクを減らすことが出来る。

大型のモンスターが行動しづらいというのも、自然と洞窟を移動手段に選ぶ理由となっている。

天候の影響を受けにくく、常に壁に囲まれているので寝るための安全地帯を作りやすいというメリットもある。

それでももちろん、命を落とすといった話は珍しくない。

そのリスクをなるべく抑える最善の方法が今のところ洞窟を利用する事なのだ。

「全員いるな? これから洞窟を通りながら南の拠点へ向かう! そこから先はお前らの自由だ!」

……自由、自由か……。

ガルシアのおっさんは疲れを知らないらしい。

いつも元気だし、見た感じまだまだ余裕そうな雰囲気だ。

体力が自分とは全然違う。

疲れ知らずのガルシアを見ながら、ミカドは『自由』という響きの終わりを感じていた。

「いよいよかぁ」

「開拓ってしんどいんだろ? 嫌だなぁ」

「それも嫌だけど探索中も魔物とか魔獣がうじゃうじゃいるんだろ?」

「あぁ嫌だ。 考えたく無いなぁ!」

男仲間のネガティブな会話が耳に入る。

しかしミカドは、その中に入ろうとは思わない。

長年の嫌われたくないと言う想いが男仲間に対しても発揮されているからだ。

……俺は、きっとこいつらにも好かれていないだろう……。

いつものように、既に嫌われていると考えると何故かホッとするあたり、自分でも、もうどうしようもないと思う。

「たく! 男どもは情けねぇなあ! あははは」

ケラケラと男を小馬鹿にするのはティナだ。

ティナは女だが、男よりも性格が男らしいと思う。

性格もさっぱりとしているし腕力も強い。

だから、ティナが言うと『男みたいな奴が』という空気が流れるのだが、肝心の当人だけは男っぽいガサツさから気が付かない。

この世界は、闇の女神様から加護を受けており、女は男よりも腕力やその他全般 of 全般の能力が底上げされて強くなっているのが普通だ。

男と女には絶対的な能力差が存在する。

それを闇の女神様が加護という形で相対的に公平……よりも少し女性が強くなるように調整しているらしい。

これによって、この混沌とした時代で性差による不要な搾取が起こらないようになっている。

……強くなり過ぎて男が不公平だと俺は思うんだけどな。

そう思う半面、女が強いと人が享受出来るメリットの絶対量は増えるのだから、全体的に見てやっぱり恩恵と言えるのだろう。

「言っておくがまだ先は長いぞ!」

俺達の私語にガルシアが釘を差すように割り込んできた。

このガルシアという男、初めて会ったときは鬼教官といった感じだったが、割と長く一緒に行動しているせいで、少し親しみやすくなった気がする。

……不思議なもんだな……。

「ここもそうだが道中に立ち寄る拠点もよく見ておけよ! 未開拓地に拠点を作れば今度はお前達が優先的に腰を据える事が出来るからな!」

これはガルシアからのアドバイスだ。

目的地までに通る拠点で、必要な施設を覚えておけば新規開拓した場所にその施設を作り、その管理を自分たちが行うことが出来るようになると……。

そうなれば少なくとも金銭面での心配は無くなり、生活は安泰するはずだ。

「その為にも探索と開拓をしっかりと頑張るように! 簡単ではないだろうがな!」

ガルシアはいつも通り、怒鳴ったような声で俺達に暗い気持ちにさせる隙を与えない。

「ミカド! 頑張ろうな!」

「うるさい。 話しかけてくるな」

ガルシアに感心していたら、アレックスに声をかけられ、俺は理由もなく苛ついた。

アレックスに話しかけられるだけで劣等感が刺激される。

劣等感のせいでアレックスの接し方が上から目線に感じるからかも知れない。

……そもそも、どうしてそんなに俺に関わろうとするんだ? こっちは毎回わざと嫌な態度を取っているのに……。何で平気な感じで構ってこようとするんだ……?

アレックスの態度はいつもの事だが、ミカドは必要の無い事を考えてアレックスへのイライラを減らそうと努力した。

……嫌いなわけじゃ……。

「お前らほんと仲いいよな! 気持ち悪!!」

「ふざけんな! 誰が仲良しだ!!」

空気の読めないホセにあっけらかんと言い放たれ、ミカドは思わず声を荒げて否定してしまった。

「ホセさあ……はぁ、あんたにはそう見えるんだね」 

カイリが信じられないといった感じでホセを見ている。

「ん? なに? ミカドの性格がネジ曲がってるって話か?? そんなの皆知ってるだろ? 違うのかよ?」

仲がいいと言った端からミカドの性格に言及する流れ……意味が分からないが、この素っ頓狂な変化球はホセならではのものだろう。

「ミカドの性格が悪いって? そうかなあ? ホセもミカドも性格は良いよ」

……アレックスは俺の性格が悪いとは思ってないだろうな。というか初めから気にして……相手に……くそ!

……ホセもムカつくし……やっぱりこいつもムカつく。

アレックスとホセのやり取りを見て、ミカドはホセの評価を上書きした。

評価は変わらず空気の読めない馬鹿。

……俺はホセだろうとアレックスだろうと、嫌われても何とも思わない……!

実際に嫌われれば気にするクセに、ミカドは心の中で強がった。

そんな場の雰囲気を察して、どう見ても年長者っぽい男が仲裁に入ってきた。

「ホセ。その辺で止めとこ。それに多分……ホセの方が性格は悪いかな」

……レオン……。

名前のかっこいい老け顔の男がホセを止めている。

かなり年上に見えるが同い歳だ。そして、老け顔だが性格は最高に良い奴だ。

ミカドも出来ればもっと仲良くしたいと思っている。

けれど、やはり嫌われるのが怖くてレオンに対してもぶっきらぼうな態度を取ってしまっている。

「はぁ……これだから男は嫌いなのよ。ゴミばっかりじゃない」

ピピがボソリと呟いたのが聞こえた。

ピピは極度の男嫌いだ。

男に対する口調も口も尖っている。

男であるミカドは確実に嫌われていると分かっているからか、逆に安心して話せる数少ない女子だった。

仲間内で使われる言葉に遠慮はない。

……そして俺達には纏まりも無いな。

ただ、仲が良かったり悪かったりするけれど、それでも小さい頃から一緒に育った……大事な仲間だった。

人付き合いの苦手なミカドだが、相手の嫌なところは上手に受け流せるし、相手の考えを察するのも普通に出来ている。

ホセは特殊なパターンの人間だから当てはまらないが。

自分勝手でまとまりのない、それでいて大事な仲間……というのがミカドの認識だった。

「ははっ。みんないつも通りで安心するよ。この調子で頑張ろうな!」

……いつも通り、この調子……。

嬉しそうなアレックスの声が洞窟内に響いた。

その声と言葉は仲間を落ち着かせる不思議な効果があった。

確かにこれがいつも通りな俺達なのだ。

できれば死ぬまでこのメンバーと一緒にいたいとミカドも思っている。

ずっと同じ場所で育ってきて、過去には色々と……目を覆いたくなるような事も、みんな同時に経験してきた。

例えば、16歳といえば思春期真っ盛り。

その思春期の男女が同じ数いれば色恋も当然あると思うだろう。

その想像は正解だ。

俺達にもそういう事は普通にあった。

けど、それはもうだいぶ過去の話だ。

具体的には6歳くらいから10歳くらいの間だったと思う。

この人の事が好きかも知れない。

はじめにそう言ったのは誰だったか……それは思い出せない。

けれどその一人をきっかけに仲間内で爆発的に恋愛ブームが沸き起こった。

けれど……そうやってカップルが誕生しても、昔から一緒に育った弊害で、相手へ配慮が出来ないのはあたりまえ。

それどころか我を通そうとする無遠慮さは目を覆いたくなる程だった。

そうなれば当然、全員が性格の不一致という結末を迎えた。

笑える事に、その過程を何と3巡もしたんだからな。

……今考えたら狂気だよ。

ミカドは黒歴史を思い出してゾッとした。

……生涯の伴侶……?

これを経験すれば、生涯の伴侶を決めるどころか恋人関係の維持すら出来ないとなるのは仕方の無いことだった。

……そんな事はどうでもいいか……。

ミカドは先程のアレックスの安易な言葉に疑問を感じている。

『ははっ。みんないつも通りで安心するよ。この調子で頑張ろうな!』

それが許されるのは……許されていたのは安全な場所だったからじゃないか?

ミカドの見立てでは、この調子で頑張れば問題が頻出すると思っている。

それは死に繋がっているのではないだろうか?

一抹の不安が、ミカドの胸を少し締め付けた。

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