【第4話】 旅立ち……④

アドセンス横長

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1 旅立ち……ブログ用④

アレックスの言う『これまで通り』、それは死に繋がっているのではないだろうかと一抹の不安を感じたのに対し、仲間の反応はミカドとは違うようだった。

他の仲間が誰もじぶんと同じ疑問を口にしないのだから、ミカドは何も反論できなかった。

……いや、反論はしないけどな。

「アレックスがいるから纏まってる感じはあるよね」

ミカドがモヤモヤしている横で、グリップがアレックスを肯定した。

周りを見れば皆がその答えに納得している様子が伺える。

「グリップが喋った!? これ、誰かに嫌な事が起きる前兆じゃねえか!?」

ホセがまた空気を読まずにアホな事を口走っている。

念の為に言っておくが、グリップが会話に参加するのは確かに控えめだが珍しいと言うほどでは無い。

そもそも、グリップもホセには言われたくないだろう。

まあ、こんな感じでグダグダでも、時間と共に目的地には近付いていく。

拠点と拠点の最短ルートは、何年も先に上がった開拓者が、全ての魔物や魔獣を駆逐しており、安全が確保されている。

もちろん洞窟は一本道ではない。

大洞窟と言われるだけあって、道は数は無数に存在する。

行き止まりや使わない道、未探索の道は通れないように柵を設置しモンスターの侵入が無いように安全を確保してある。

その安全なルートを通り……。

「喜べ! この拠点の次がお前らの目的地だ! ここで目的地の情報を集めておけ! サボると後で後悔するぞ!」

ガルシアの馬鹿でかい声が洞窟に響いた。

この出入り口から外に出れば、地上に確保した拠点があるらしい。

世界樹のてっぺんに着いてから、更に数日かけてようやく目的地の1つ手前にある地上の拠点に到着したのだ。

ガルシアによれば目的地での生活は現地の人に習うのが一般的らしい。

ただ、中には評判の良くない人もいるらしく、だからこそ隣の拠点であるここで情報を集めるのが重要らしい。

ここで手を抜くと危険を回避できずに死ぬと脅された。

情報不足が原因で不利益を被っても、それは自己責任と言うわけだ。

それでも直接殺されるような事は無いようだが……。

ミカド達は今、大樹を登って上の世界に来ている。

『上の世界は別の世界であり、自分たちとは違う人間が住む世界である』

ミカド達は闇の世界と蔑んでくる上の世界の人間性を軽蔑している。

上の世界の人間は利己的で自己中心的なゴミばかりで、自分達のせいで世界が壊れていくのに、見て見ぬふり……知らんぷりしている。

そんな上の世界の汚い人間たちと自分達は違う。

その選民意識はプライドであり、自分自身の悪事へのブレーキでもあった。

自分達は上の世界の人間とは違う。

道徳心を持って行動できる真っ当な人間なのだ。

その強い意識があるからこそ、極悪な選択を避ける結果になっていた。

つまり何が言いたいかというと、ミカド達の世界の人間は、上の世界の人間と同じように見られたくないから、最低限の民度が保たれている……という事だ。

目的地前の拠点で情報収集するメリットは他にもあった。

手前の拠点では自分達の利益に直接関係が無いので、良い事も悪い事も隠さないで親切に教えてくれる人が多かったのだ。

もしこれが目的地での情報収集だったなら、情報提供者が自身の利益を細かく勘定に入れるだろうし、そうなれば情報の正確さもかなり怪しくなったと思う。

ガルシアはそういった事を恩着せがましく言わないが、細かいサポートはこれまでも十分にしてくれていたのだろう。

情報を集める際は『必ず手分けして別々に』と、アドバイスをくれたのも大きかった。

ガルシアがあまりにも執拗に言ってくるので、仕方なく手分けして別々に情報を集めたところ、持ち帰ってきた同じ情報でも、一人ならあまり重要と思われずに切り捨てられる所だった重要情報があったり、違う側面が見えたりもしたからだ。

そんな感じで時間が許す限り貪欲に情報を集め、そして最後の拠点である目的地に向かった……。

ようやく目的地に辿り着き、胸の中の不安がどんどん大きくなっていく。

「ここが、今一番端にある拠点だ! お前らにはここから先の開拓と、この先の拠点作りをしてもらう! この先は当然、魔物も魔獣も出て来る! 油断すればすぐに死ぬこともあるからな!」

この拠点の名前はキナーク砦と呼ばれている……。

……ここからだ……。

このキナーク砦からはガルシアの引率を離れ、自分の力、仲間たちと協力して身を立て、生活の基盤をゼロから作らなければならない。

「この先はお前達の努力次第だが、住む場所は次の派遣が来るまでは新人宿舎を無料で使わせてやる! 飯は2週間だけ出す! その後は知らん! 何とか出来なければ野垂れ死ぬだけだ!」

口調はいつも通りのうるさい怒鳴り声だが、その内容は俺たち新人に対してかなり配慮されたものだった……。

「当然何も分からんだろう! そこでお前らよりも先に来て自活している先輩を呼んである! 奴らに習うも良し! 話を聞くも良し! 全て自分で調べるも良し!」

これも事前に孤児院で聞いていた通りのシステムだった……。

「お前らは自由だ! 好きに行動すればいい! ただし、ここからは……いつどこで誰が死んでもおかしくないと知れ!」

……この耳障りで馬鹿でかいおっさんの声とも、いよいよここでお別れかと思うと、ほんの少しだけ感慨深くなるな。

こんな風にどうでもいい事を考え、都合よく現実逃避をしていれば、この先簡単に死んでしまうだろう。

……いい加減、気を引き締めないとな……。

自由といえば聞こえは良い……。

けれど、ここに来るまで孤児院でずっと一緒だった大切な仲間も、ここから先も同じように一緒に行動するとは限らない。

命の危険が常に付きまとう以上、誰も他人の仲間の命まで責任は負えないのだ。

一つ前の拠点で『自分で選択し、責任は自分が負わなければならない!』とガルシアはそう言った。

まったく、その通りだと思う……。

「精々生き足掻いて長生きすることだ! 解散!!」

ガルシアと直接深く絡む事はしなかったが、ミカドはこのおっさんの事を割と気に入っていた。

ガルシアの最後の餞別的な挨拶が終わると、待機していた先輩たちの間で、あちこちから新人勧誘の声が騒がしく始まった。

こちらを見ていたいかにも平凡そうな男が、俺達の様子を値踏みするように見ながら誘いを掛けてきた。

「ここで生きていくにはコツがある! それさえ分かれば安全に暮らせるぞぉ! さぁ、俺達の仲間に入らないか!?」

見た目は非常に平凡だが、手堅く生き残っている堅実なパーティなのかも知れない。

次はやたらと重装備で、見るからにゴツい感じの武装をした高レベルそうなパーティだ。

「お前らは俺達の後ろで一人前になるまで見ていればいい。俺たちが必ず守ってやる。俺達といれば必ず成長させてやるぞ!」

その言葉に引き寄せられるように、ふと目を合わせてしまったオドニスが捕まり、それはそれは熱心な勧誘が始まった。

オドニスはこちらをチラチラと見ながら、見るからにオドオドしている。

助けて欲しそうな顔だが、それはハッキリと声に出さないと他人には伝わらない。

勝手にオドニスの人生の責任は負えない。

オドニス自身が自力で声を出して助けを求めるまで、そのまま放置するしかなかった。

……冷たいようだけど、当然の事だよな。

次は女性だけの華やかな、けれど鋭い目つきのパーティのようだ。

「男と同じパーティなんてナンセンスだよ! あんな奴らと混じらず女だけで安心の私達のパーティにおいで!」

俺達の中でピピは極度の男嫌いだ。

同じ男でも、同じ孤児院で育った俺達は例外……なんて事は無く、普段から近付こうとすらしない。

ピピは高確率でここに入るかもなと思ったら、案の定、率先して話しを聞きに行った。

仲の良いセルナも、影のようにピピと一緒に行動するようだ。

男勝りのティナまでその輪へ動いたのは予想外だったけど、相変わらずあいつは行動が読めないやつだ。

……アイツ、女の分類に入るのか?

探索系の勧誘パーティはこれら3組だけで、残りはソロで活動している人ばかりのようだ。

「俺は1人だが知識がある! お前らのパーティに俺を混ぜてやろうって奴はいないか!? 俺の知識は必ず役に立つぞ!」

……なるほど、こちらは人数がそこそこいるから、組めばすぐにパーティとしての形は保てる。その代わり、圧倒的に現場の経験が足りない。

その足りない経験を、自分の知識を切り売りして自分が埋めるということだろう。

ソロになったのは仲間が戦闘で死んだか、あるいは無能すぎて仲間から追い出されたか……どちらにしても本人の意思では無いのだろう。

次のソロはきりっとした女性だった。

「私は前衛で剣が得意だ! 空きがあったらパーティに入れて欲しい! もちろん役に立つはずだ!」

そんなに強そうには見えないが、女性なら間違いなく闇の女神様の強力な加護が付いているはずだ。

単身でもやっていけるだけの実力があるのかもしれない。

仮に単身で大丈夫だったとしても、パーティを組んだ方が効率も安全性も遥かに高いのだから、新人枠でパーティが組めるのなら……という事だろう。

次のパーティは主旨がよく分からない。

「僕達は安全を重視しています。 不安があるなら僕達のグループに入りませんか?」

主張が曖昧で要領を得ない。

こんな頼りない言葉じゃ誰もが入りたがらないと思うが……いや、さっきのオドニスあたりはこういう温い場所が好きそうだな。

次は大人の女性がリーダーのパーティだ。

「私達は食料調達をメインに活動しています! 安全で確実!! 食事に困る事もありませんよ!」

どうやら前線での戦闘ではなく、次の拠点が出来たとき、一番に店を構えるのを目的としているようだ。

新しい拠点が出来れば真っ先に店を建て、飲食系のインフラを牛耳りたいらしい。

将来、手堅く安定した生活を望むなら、今からここに唾を付けるのもありだろう。

次は活動の主旨がだいぶ異なる、役所のようなグループだ。

「戦闘が苦手な人はいませんかぁ!? 戦うのが怖い! 戦いは好きじゃない! そんな人は俺達のグループで拠点維持活動をしませんかぁ!? きつい仕事もありますが、安全は保証します!!」

役所や組合に近い、非戦闘の活動をしているらしい。

俺達もこれから稼げば、少しずつお金を税の様に徴収される仕組みらしい。

そういう感じなら組織として既にある程度安定しているといえる。

今は深刻な人手不足で激務らしいが……。

押し寄せる勧誘はこれで全部だった。

実際にここで活動している先輩はもっと多く、今日ここに来ている人はごく一部らしい。

なぜかというと、今現在困ってない優秀なパーティは、わざわざ新人を勧誘しなくてもやっていける……という、なんとも世知辛い理由らしい。

「なあミカド! 一緒にやろう!」

「はぁ? ……お断りだね……」

……アレックスの奴、やっぱり声を掛けてきやがった。俺はガルシアの言う通り、アレックスに自分の命を預けるつもりは毛頭無いんだよ……配置を勝手に決められるのも不愉快だしな……。

「みんなも一緒に行動しない? 勧誘に乗るよりパーティじゃない人を誘って教えてもらう方が安心だと思うんだよ」

「俺はアレックスについて行くからアレックスの意見に反対は無いよ」

アレックスの誘いに、まずソーマが素直に乗っかった。

すると、その流れに乗るように次々に私も、俺もと賛同の声が上がった。

……結局アレックスと行動を共にするのは、ホセ、レオン、エニア、レベッカ、リオニ、カイリ、ソーマ、グリップ、以上の9人……それから俺の10人か……。

アレックスの生ぬるい意見に乗るのは致命的に気に入らないが、ここでの未開の生活に最低限慣れるまでは、ある程度裏表が分かっていて信用できる相手で固まった方が無難だと判断したのだ。

足りない現場の知識と戦闘経験は、先程のソロで熱心に自分を売り込んでいた男と女の先輩をそれぞれ新しくメンバーに入れて、手っ取り早く解決させる事になった。

セルナ、ピピ、ティナは予定通り女性パーティに入り……オドニスは先程の重装備パーティを断りきれず、そのまま引き抜かれて行った。

……ご愁傷さま。

……不良のダビは、コツが何とか言っていたあの冴えない平凡そうなパーティか……ダビの入ったあのパーティ、あいつの暴力で乗っ取られるかも知れないな……。

それぞれ違う道へ離れていったかつての仲間たちの背中を見ながら、ミカドは強烈に実感していた。

ここからは誰も守ってくれない。

本当に自分が頑張らないと一瞬で生きていけなくなる。

今まで育ってきた温い孤児院とは、完全に違う世界なのだと。

アドセンス横長

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