【第6話】 試行錯誤……①

アドセンス横長

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3 試行錯誤……①

ミカドから少し距離のある場所。

ソーマとエニアは茂みに身を隠しながら獲物についての相談をしている。

「どう?」

「親子みたいだな。どっちにしても俺達の手に余る……と、思う……。風向きは大丈夫だと思うけど……どう……?」

「うん……大丈夫だと思う」

獲物に勘付かれないよう、ソーマは身動きを止め、指笛で仲間に獲物の発見を伝えた。

その指笛に反応して来たのがエニアだった。

いまはソーマが獲物を確認し、エニアが周囲の警戒にあたりながら情況を聞いているところだ。

そわそわと獲物の様子が気になるエニアだが、それも仕方がない事だった。

狩りは初日の手痛い失敗から、なんと1度も成功していないのだ。

狩りをする前、孤児院組は根拠も無く自信満々だった。

それが今では、全員が自分の能力や可能性に疑問を感じている。

自信は無くなり、出来るという気持ちと駄目なんじゃないかという気持ちで揺れ動いていた。

「やっぱりウサギとかタヌキの魔獣に狙いを絞った方が良いと思う……」

エニアに話し掛けるソーマの顔からは、恐れが見え隠れしている。

「だよね。というかイノシシは怖すぎるし……」

エニアの頭には、木の葉のように軽々と吹っ飛ばされるカイリがありありと思い浮かんでいた。

あんなに軽い感じだったのに……。

『ドンッ!』

吹っ飛ばされたカイリが地面に叩き付けられた時……『質量を感じさせる鈍い音』が鼓膜をなぞり、それが怖気としてエニアの耳に残っている。

そう……目の前にいる獲物は、初日に反撃を受けたイノシシの魔獣、その親子だった。

◆ 焦燥の1週間、仲間だけでの話し合い

あの日を思えば魔イノシシにはとても手が出せない

ソーマは後ろで警戒に当たっているエマとミカドに向かって腕をクロスさせてバツを作り狩りの失敗を告げる。

手を出していないのだから失敗ではないのだが、成功していない以上、失敗した気持ちになるのは仕方ない。

エマ班はイノシシに見つからないようにその場をそっと離れた。

これで良いんだよね……?

エニアは誰に……というわけでも無く、この行動が正しかったと言ってほしかった。

「そっか、魔イノシシの親子か……それは引いて正解だと思うわ」

エマはそう言って、ソーマとエニアの判断を肯定している。

「蛇とかカエルの魔獣は肉が美味しいからできれば狩りたいんだけど……」

ここに来るまでに、見かけた魔獣だ。

蛇もカエルも大きさや数次第ではあるが、エマの説明によると初心者でも狩りやすい部類に入るらしい。

ただ、現状だと蛇の相手は不安が勝り、カエルの相手は足場の問題で、やはり不安が勝るとの事だった。

無理をさせないのは、オマールより慎重なエマの性格なのだろう。

拠点では自分達よりも経験豊富な先輩達が、様々な魔獣を狩り、そうして色んな種類の肉が食されている。

孤児院組が恐怖を植え付けられてしまったイノシシの魔獣なんかは、肉が美味しく大人気だったりする。

そのため、沢山狩られてしまい拠点近くの個体数が激減しているらしい。

もしもイノシシの魔獣を見逃したなんて知られれば、凄く罵倒され……馬鹿にされるのは間違い無い。

それでも……。

「焦りが1番良くないわ、まだ新人なんだから慎重に行動しましょう」

……エマは俺達の安全を優先してくれている……けど。

ミカドは、エマからの視線を意識的に避けた。

……またか。

ここ数日の様子から、狩りに失敗した時に、オマールとエマの責任だと呟いたのが聞こえていたのだろうとミカドは思った。

……まさかあれが聞こえてたなんて……。

気取って悪態を付く性格は、ミカドの本質では無い。

嫌われたり負の印象を持たれるのはミカドの最も恐れる事だからだ。

エマの心中が気になり、ミカドはここ数日、内心穏やかではなかった。

「くっそぉ! 今日もダメなのかよ!!」

ホセは苛立ちを隠さず憤っている。

上手くいかない焦れったさから最近はずっと機嫌が悪い。

それでも人のせいにしないのは、ホセの数少ない美点なのだろう。

「もう1週間だよ……?」

そう言いながらリオニは肩を落とし嘆いている。

「残り1週間で食べていけるようになるのかな……」

グリップが不安を吐露すると、隣で聞いていたソーマが、自分も不安なのにグリップを励ましている。

みんな……上手くいかない現状に大きなストレスを感じていた。

上手く導けていないオマールとエマに不満をぶつけるのも違うとは思っている。

そこで、現状を打破するための話し合いを、みんなで行う事にした。

不満をぶつけず、現状を打破するための話し合いが必要だとアレックスが言ったのだ。

だからこの場にはオマールとエマはいない。

オマールとエマがいれば、そっちに意見が引っ張られてしまうという懸念もあった。

決して仲間はずれにする意図からでは無いし、そんな事は誰も思っていない。

あくまでも、このままではマズイ……という考えからである。

しかし、負の感情はよくない方へ向かいやすい。

ミカドは巻き込まれないように、さりげなく仲間の視線を避けて目立たない場所に移動し、そっと気配を消した。

◆ 綺麗事への反発、頼れる男の軌道修正

「確かに今は厳しい。でも初日に痛い目にあったおかげで大きな怪我はしていないのは素晴らしいと思うんだ! 焦らずやれば俺達なら出来るよ!」

アレックスはみんなの不安を和らげようと仲間を鼓舞した。

……あいつは何時でも前向きだな……でも、カイリは怪我したぞ……?

正直、いま自分たちに迫っている状況がきちんと見えているのかと問いただしたくなる発言だった。

「そりゃあちょっと楽観的過ぎるんじゃねえの? 1つも結果を残せてないのに上手く行く? 意味分かんねえんだけど?」

機嫌の悪いホセは不満を隠さずにアレックスに食って掛かった。

正直ミカドもホセの意見に近い。

いつもならアレックスのポジティブな思考と発言は仲間の気持ちを和らげていたはずだ……それは空気を読めないホセにも当て嵌まっていたのだが。

……それだけ状況が悪いって事。

アレックスの脳天気にぶつけてやりたい言葉だ。

こういう時、言い辛い事をズバッと言う、空気の読めないホセの重要度が際立つ。

配慮して問題がなあなあにされれば、本気になる前に命を落としてもおかしくない。

「でもまあ、愚痴っても何も変わらないし。気持ち切り替えてやっていこうよ。 これまでの経験から作戦も新しく練り直そう。どうすれば良いと思う?」

アレックスのポジティブ発言の効果が無く、逆に場の空気が悪くなるのを察したレオンがにこやかにフォローに回った。

……やっぱりレオンは頼りになるなぁ。

ミカドは素直に感心した。

見た目はくたびれた初老のオッサンにしか見えない華の無さだけど、性格は名前負けしていないと思う。

仲間もレオンの言うことは割と素直に耳を傾ける。

それはレオンに対する信頼の証でもある。

だからだろう……レオンの発言をきっかけに、これからどうすれば良いか、ポツポツと……意見が出始めた。

「目的の獲物を早く見つけないと話にならないと私は思うね」

レベッカはこれまでの狩りを思い出し、獲物発見までに時間が掛かり過ぎていると指摘する。

確かにあの捜しまわる時間は効率が悪いと思う。

改善できるなら色々と良い結果に繋がりそうだ。

「狙ってる時に危ない魔物や魔獣がいないか、もっと注意した方がいい」

これはアレックスの意見だ。

アレックスの特徴の1つは、仲間の怪我を極端に嫌う傾向がある。

綺麗事が多いせいでアレックスに苛つく事も多いが、今回の意見にはミカドも同意だった。

……油断して怪我をするのはアホらしいし。

「敵の正面は防御を中心にして、攻撃は考えない方が落ち着いて対処出来るかも」

カイリが呟く。

初回の狩りで唯一怪我をした彼女は油断もあったが防御の意識が足りていなかったと反省を語った。

確かに、あの時もっと真剣に防御の事だけ考えていれば吹っ飛ばされ無かったかもしれないし、吹っ飛ばされたとしても受け身が取れたかもしれない。

「そう……だな。 俺もあの時にしっかりと意識を向けていたら何か出来たかもしれない」

カイリと一緒にイノシシの正面を担当していたグリップは、動けず何もできなかったと顔を顰めている。

人数がいても、連携できなければ烏合の衆という事だろう。

「とにかくさぁ。そろそろ結果を出さないと。飯食えなくなるんだぜ?」

ホセが差し迫る現実を言葉にする。

分かっている……そんな事は分かっているからこそ今こうして集まっているのだ。

ホセのこの発言は仲間を激しく苛立たせて火をつけた。

そして、これ以降の議論は恐ろしく過熱し、深夜まで及んだのだった。

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