【第15話】 洞窟探索……④ 感情に負ける正論
4 洞窟探索……④
◆向けられる視線
「嫌な予感がする……」
言葉にするつもりなんて無かった……それなのに、気が付けば声に出していた……。
「アレックス……お前はリーダーだろ!? お前が動けばみんなも動くんだ!! だから……感情に任せて動くな!」
自分の行動が信じられなかった。
……何で俺は出しゃばってるんだ……?
頭の片隅で冷静な自分が『止めろ!』と大声で制止している……にも関わらず、止められない。
……アレックスが間違っているからか? いや……アレックスの考えも間違っていない。
……心配するオマールとエマの意見を蔑ろにしているからか? いや……それも違う気がする。
……じゃあ何でだ……?
仲間がみんな自分の方を見ている。
……ホセ、レオン、リオニ……オマール、レベッカ、カイリ、グリップ……エマ、エニア、ソーマ……みんなが俺を見ている……そしてアレックスも……。
「それでも! ミカド、俺は1人でも行くよ!! 残りたければ残ってくれていい。その方が安全なのは確かだ。それに安全な場所に居てくれるのは俺も安心できる……」
……そうだよな……俺の意見くらいで、こいつが仲間を見捨てる訳が無いよな。
良い所であり、アレックスの弱点でもある。
……そう……どうせ俺の意見なんかこいつは聞いたりなんかしない。
「俺だって……助けに行きたくないわけ無いだろ!……でも、危な過ぎる!」
言ってもダメなのは分かってる。
もうこの流れは変わらないだろう。
……俺の意見で何人かは冷静になってくれるか? 駄目だろうな……俺の意見は通らない。ああそうだアレックス……仲間を助けるという響きは甘いだろう……。
……俺の否定的な意見は薄情に見えるだろうさ!
「分かってる! それでも俺は助けに行く! みんなは残ってくれていい!」
……そんな聞き方でみんなが仲間を……お前を見捨てられる訳がないだろ? お前はそんなこと、微塵も思っちゃいないだろうけど……お前も仲間の1人なんだよ……。
「お、俺はいくぞ!! オドニスを助けてやらねぇと!! 俺が! 俺が助ける!!」
……ホセ……お前を止めるのは元々無理だ。何だかんだで、お前は良い奴だからな。だから止めたいんだ……。
「私も行くよ。私は戦える……そのために強くなったはずだ!」
レベッカ……お前は力が強くなった。アレックスが行くのに強いお前が行かないなんて言えないよな……でも、それは本音か……?
◆ 熱くなれない情けなさと、生存本能
「ミカド、心配なのは私も同じ……だからさ、私がみんなを怪我させないようにするから安心してよ……」
……リオニ……頭が良いお前なら分かるだろ? 今のアレックスが冷静じゃないこと、危険度がこれまでと違う可能性が。
……無理だ……今更みんなの意見は変わらない……このままオドニスを助けに行くことになるだろう。……駄目だ、嫌な予感しかしない。俺は何でこんなに胸騒ぎがするんだ……?
……悪いカイリ、俺じゃあ止められそうにない。怖いんだろ? 俺もだ……。
「俺もみんなを守るからさ」
……レオン……ダメ押しだ。もう絶対に覆らない。
結局、ミカドの意見はオマールと同じく……通る事は無かった。
怯えるカイリをエマとエニアが励まし、オマールはそれを見てバツが悪そうにしている。
グリップはレオンと何か話しているけど、何を話しているのかミカドには聞こえない。
ソーマはリオニとアレックスと一緒に作戦でも立てているのだろう。
斥候と参謀、そしてリーダーの組み合わせだ、心はもう、『どうやってオドニスを助けるか』という事でいっぱいだろう。
助けるのは成功するという前提の雰囲気に、ミカドは嫌な予感が止まらない。
……もしかして、このメンバーを見るのは今日が最後なのか?
最悪の考えが頭をよぎった。
……くそ! なんだそれ!! 俺は何を考えてんだ!!
「みんな! 直ぐに準備を済ませて助けに行く!! 残りたい人は本当に残ってて良いから!!」
……そうだ、お前はそうやって最後まで仲間の意思を尊重しようとする。だから! 誰も残らないんだよ!!
◆多数決の呪縛、殺意のバグ音
今までのミカドなら決して言わなかっただろう発言。
それを口にした理由。
それは魔法を覚えてから度々感じるようになった、殺意と緊張感に原因があった。
それまで感じたことの無かったそれは魔法の副作用なのかも知れない……。
普段生活していると突然身の危険を感じる瞬間があるのだ。
それは安全なはずのキナーク砦にいても同じで、突然感じるのだ。
1番多いのは殺意だ。
自分が狙われているかの様に錯覚する。
身体が強張るほどの緊張感に襲われる事もある。
殺意も緊張感も、感じた時は集中力が増し、辺りの様子に気を配らなければ落ち着かなくなる。
これが虫の知らせというやつだろうかとも考えた。
考えても原因や理由は分からない。
今、その殺意と緊張感がかつてない程に自分の精神を追い詰めていた。
……嫌な予感がする……。
危険は避けるべきだと思った……。
『……す』『……コロ…』
……心なしか変な声まで聞こえるような気がする。良くない事が起きる……。
そんな不安を抱えたミカドを置き去りにしたまま、周りは救出に向け動き始めていた……。

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