【第29話】 繋がりをもとめる小さな世界
6.5 おもいやり
私の世界はある日……突然変わった。
それまでずっと1人ぼっちだった私が、突然1人ではなくなったのだ。
なんて……なんて素敵なのだろう……。
思い出せないほど遠くに来た私に……貴方の繋がりは、凍りついていた、色んな感情を優しく、甘やかに刺激してくれた。
嬉しさ。楽しさ。寂しさ。不安。
そのどれもが懐かしく、そのどれもが愛おしく思えた。
忘れていた感情が、私の細胞を歓喜で色とりどりに輝かせるようだ。
身体を苛む魔物の苦痛は、相変わらずそこにある。
けれど、それ以外の感情のすべてが、私の死んでいた心を……生き生きと――蘇らせてくれた――。
私はもう、貴方を手放せない。
失うのは、もう懲り懲りなのだ。
……もしも、この繋がりが無くなってしまったら?
その時……私はもう終わりで良い……いや、むしろ。
――終わりたい。
私は心の底から、そう思い……そうすると決めた。
私がどれほど強く望んでも、貴方の明確な言葉は私に伝わってこない。
それが凄く寂しくて……そして、どうしようもなく怖い。
私はいつも、時間を持て余している。
私が本当にひとりぼっちだった頃……。
持て余した時間は全て、終わらない呪いのような嘆きにだけ使われていた。
失ってしまった家族。壊してしまった家族。
すべては私が原因で、けれど、私のせいでは無い……。
悲しみ、嘆き、恨み、痛み、恐怖。
持て余した時間のすべてが、底の抜けた絶望だった。
そんな悍ましい時間が、今では違う。
時間は……ただの時間になった。
持て余した時間のなかで、私はずっと考えている。
私のこの想いは、私の意図とは関係無く、貴方に繋がり届いたのだろう。
なぜ繋がったのか、私には分からない。
無意識だった事を思えば、ありえそうなのは、ただ感情が激しく昂ぶったときだろうか。
……私の、あの強い感情が溢れたとき?
考えても答えは分からない。
分からないけれど……私はこれを『残酷な世界からのささやかな贈り物』だと思う事にした。
貴方が贈ってくれる感情が伝わる度に、私は心の底からホッとしている。
長い間、貴方からの感情が伝わってこない時、私は不安で居ても立ってもいられなくなった。
時には、明らかに私を指定した感情もあった。
私だけに向けて真っ直ぐに伝わる貴方の感情は、私の歪んだ心をどうしようもなく歓喜させた。
私はいま、幸せを感じている。
ひとりぼっちではなくなった私は、この不確かで不安定な繋がりを必死に捜している。
たとえ会えなくても、貴方のすぐ近くにいたかった。
姿さえ見せなければ、私は1人じゃない。
貴方がいてくれる。
これは、ほんの小さな私のわがままだ。
この世界がどれほど残酷であっても、これだけは許して欲しい……私はそう切に願った。

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